品質改善のシナリオと優先度
企業である以上、利益(Benefit)の向上をし続ける使命がある。
不良(品質)はロスコスト(マイナス要素)であるが故に、改善を図るべきです。
しかし、モグラ叩きのように、個々の問題に対策を実施することは、さらなるロスを生むこともある。
などを、先に述べさせて頂きました。

では、品質改善実施のシナリオはどのようにすべきでしょうか?
1.付加価値をKPIに、その阻害(ロスコスト)の大きさとなっている工程の改善を行う
2.発生事象を元に、真の原因を明らかにする
3.改善施策を検討する。施策実現に時間を要する場合は、暫定施策などによる”場繋ぎ”を検討、実施する
4.改善完了後の状態を監視する。新たな課題があれば、1.〜3.の手順で、その課題に取組む


1.付加価値の評価
 A→B→C→Dという工程を想定します。
 ここでボトルネック工程をCとします。Cの生産能力は100台/月と仮定し、その不良率を5%とします。
 品質問題は、B工程でも不良率=10%あるが、生産能力は300台/月。なお、完成品の価格を\1,000とします。
 結果、下記試算にあるように、ボトルネック工程に改善効果は大きくなることが確認できます。

2.発生事象を元に、真の原因を明らかにする
 不具合事象として、塗装不良があるとします。
 その内容は、
  ・塗漏れ
  ・塗装剥がれ
 がある。
 さらに、分類をすると「塗装剥がれ」は、輸出品が大半であることが分かりました。
 輸出品と国内品の塗装条件は同じであり、不具合報告は受入国の開梱で確認れていました。
 違いは、梱包様式の違いがあり、塗装出来栄えや梱包改善を行いましたが、不具合の再発をしていました。
 その後、さらに、塗装、梱包の改善を図りましたが・・・
 果たして、この施策は真の原因へのアプローチだったのでしょうか?
 そこで、『プロセス分析』をすれば、ここに環境要因も抽出されます。
 つまり、海上輸送であればコンテナ積載であるため、塩害対策としているビニール梱包が、輸送途上の
 高温・高湿によりビニールと融着するなどの因子として、浮かび上がったかもしれません。
 航空輸送であれば、上空における低温・低圧が因子で、ビニール袋の圧縮に伴う融着があったかもしれません。 の、ように、プロセスを取巻く因子を抽出し、それらの因果関係を分析するのがプロセス分析です。
 もし、上記のように、外的環境とビニール梱包が誘発要因なら、そこを改善するのではなく。
 さらに、塗料とビニール梱包の因果関係にも踏み込むことによって、真の課題解決に至ると思います。
 筆者の憶測ながら、真の原因は、塗料や工程の問題とし、
  塗料なら 輸出品と国内品の塗料および塗装要領の見直しをする
  工程なら 最終塗装を現地化する
 などの根本施策に至ったかもしれません。

3.改善施策を検討する。施策実現に時間を要する場合は、暫定施策などによる”場繋ぎ”を検討、実施する
 2項の取組みとして、塗料変更、塗装の現地化が施策となった場合、とても時間が掛かることが想像できます。 時間が掛かるという事は、その間にも不具合を発生させ続けることなので、本望ではありません。
 そのため、場繋ぎとしての「暫定施策」が必要です。要は、止血ですね。
 もし、塗料の変更を選択したのであれば、ビニールとの融着なので、
 暫定施策としては、塗装面に融着しないペーパを挟むなども一案としてあるのではないでしょうか?
 これなら、工程(工数)を多大に増やすことなく実現できそうですね。

4.改善完了後の状態を監視する。新たな課題があれば、1.〜3.の手順で、その課題に取組む
 1項の事例で示したように、C工程が改善され、利益に貢献できました。
 しかし、売上が常に100台ならボトルネックに変化はありませんが、
 需要が低迷し、損益分岐点である50台規模となると、B工程(不良率10%)の改善による『利益創出』
 に取組事になります。
 よって、状況を監視し、プロセスとして課題を明らかにして、改善をし続けることが大事です。


(T2)